ジャズには「名曲というものはない。名演があるだけだ」という格言があるけれど、インド音楽にも名曲というものはない。特定のラーガ(旋律)やターラ(拍子)がさまざまなバリエーションでひたすら繰り返されていくのだ。
いかにプレイするかが腕の見せ所だ。
インドの伝統的なコンサートは深夜にはじまり早朝に終わるのが普通だが、調律だけでも30分くらいはかかり、非常にゆっくりと何時間もかけてピークへと登りつめていく。
これはその頂点のみを集めた非常においしいCDである。
しかもさまざまなマエストロとの名演を選び出しているので、多彩なインド楽器の音色が楽しめる。
4曲目だけはアメリカの大学での講演で、あまり聞かれない6.5拍子の実演をしているので、実際にカウントしながら聞くと楽しい。
何度かザキールの演奏を間近にしたことがあるが、本当に指先が見えない。まるで飛ぶ虫の羽根のように透明にしか見えない。このCDでも本当に1人で演奏しているのか疑いたくなるところが多数である。
私はこの頃の演奏がいちばん好きだ。もっとも脂がのっていた頃のように思う。
近頃では世界のパーカッションとの合奏やジャズ、ニューエイジっぽいものまで手を出しているが、正直タブラはやり尽くしてしまったんではないかと思う。
本当に太鼓の魔神が乗り移っていたのではないかと思うほどの凄みを感じる。
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