経済発展と環境保全は両立するか。それとも対立するか。
本書は、この古くて新しい問に対し、様々なアプローチから迫っています。
経済学的には、企業は完全情報の元で合理的な決定を下し、利潤を追求します。従って、環境保全や技術に関する情報も全て企業行動の上では折込済みです。その前提の下では、環境保全は企業にとって追加的なコストに他なりません。
しかし、実際に企業にアンケートを取ってみると、環境保全や技術に関する情報を把握しているところは案外少なく、特に環境保全のコストは、特別な処理をしなければ会計上現れないという実態がわかります。
「ポーター仮説」と言って、環境保全を求める規制が厳しくなると、今まで見えなかったコストが顕在化し、企業はそれを克服するために技術開発を活発化させるので競争力が高まるとする考え方があります。合理的な企業行動を前提にする経済学の立場からは批判されていますが、実態と経営学の考え方からは十分起こりうることです。
また、本書では、OECD加盟国のうち日本を含めた17カ国で「環境クズネッツ曲線」が当てはまることを示し、この曲線どおり、経済がある程度発展した際に国全体を環境保全に導くための処方箋を考察しています。
さらに、議論は世界の食糧問題や持続可能な農業、森林会計やエコツーリズムへと展開していきます。
最後に、中国とフィリピンにおけるケーススタディがあります。中国では環境法制度が整備され、一部では成果が上がりつつありますが、統計漏れなどが指摘されており、実態が正しく把握されているかが議論になっています。
先進国から途上国まで、公害防止から食糧問題まで、幅広いテーマを扱った良書です。一つ一つの論文も短く簡潔で、興味のあるところだけ飛ばし読みしても面白いです。お勧めです。