20世紀型の公共事業のどこに問題があり、21世紀型の公共事業をどのように構築すべきか。本書は、様々な事例研究や制度分析を通じてこの課題に挑戦しています。
巻頭論文では、北海道の治水事業を取り上げています。旧建設省作成のガイドラインの運用により、基本高水流量が史上最大の洪水を遥かに上回る水量となる実例を示し、これが過剰な公共事業を生む原因となっていることを明らかにしています。
「公共事業の環境評価と意思決定」では、事業により失われる環境を経済価値に変換する取組が世界的にも進んでいないことを踏まえ、既存の知見による望ましい評価法を模索しつつ、リスク論や住民意思による意思決定を提言しています。
「国内の事例研究」では、北海道と滋賀県の事例が現場の取材に基づくもの、アクアラインの事例がCVM、廃棄物・循環型社会関連の3つの論文が財政・制度論からの分析です。見方と場所を違えながら、21世紀型の公共事業の在り方を探っています。
「海外の事例研究」では、発展途上国においては、日本では当たり前に整備されている社会資本が未だ未整備であることが示されています。これらの国々では、環境配慮などの手続き面で21世紀型の手法を取り入れつつ、社会資本の整備を各所で進める必要があります。その実例として、国際開発銀行の環境ガイドラインの運用実態が紹介されています。
国内外の公共事業における経済分析、財政論、制度論など、縦にも横にも幅広い分野が網羅されています。文句なしで星5つです。