一口に「トランスナショナル」な事象と言っても、いくつかのレベルがあると思われる。
1.「想像の共同体」としてのネイションの下で人々が閑却していた、もともとあった「トランスナショナルな歴史的現実」
2.グローバル化が言われる現代において新たに生まれてきた「トランスナショナルな新展開」
3.トランスナショナルな方向へ世界を変化させる流れを推し進めようという「トランスナショナリズム」
評者でも少なくともこれくらいは思いつく。
で、この本で言われている「トランスナショナル関係論」とは、これらをどこでどのように扱おうとしているのだろうか。論集だから仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、読み通してみてもそのあたりが今ひとつ釈然としない印象が残る。したがって、トランスナショナル化する世界やグローバル市民社会についての楽観的な見通しばかりが目立ち、「今日の国際関係の諸相を明らかにする」ことを目的とする本として、やや危うさが感じられた。
こうした点に関しては、この本を出発点として読み手の側が自ら考えるべき課題となっている、と言えるのかも知れない。
